木造住宅の耐震リフォームってなに?

木造住宅の耐震リフォームってなに?

地震はいつ起こるかわからない自然災害です。大規模な地震が発生した場合、木造住宅は倒壊や損壊のリスクが高まります。そのため、木造住宅の耐震性を高めることが重要です。

木造住宅の耐震性を高める方法には、耐震リフォームがあります。耐震リフォームとは、既存の木造住宅の耐震性を向上させる工事です。
今回は木造住宅の耐震性について、特徴と法律改正などを中心に見ていきます。

目次

木造住宅の耐震性、誤解していませんか?

木造住宅は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物と比べて、耐震性が低いと考えられがちです。しかし、これは誤解です。

地震によるエネルギーの伝わり方は、重量に比例します。そのため、重い建物ほど揺れやすく、地震による破壊も起こりやすいとされています。コンクリートや鉄は重い素材であるのに対し、木材は比較的軽い素材です。その点では「地震のエネルギーを受けにくい」建物であるといえるのです。
また、木材自体がほかの建材と比べると「曲げの力」に強いことも、地震に強い根拠になります。木材はコンクリートなどと比べると圧縮や引っ張りの力に強く、変形しながら地震のエネルギーを逃がします。
加えて、木造の工法は、地震国である日本で伝えられてきたものです。地震へのノウハウが古くより蓄積されているといえます。
それだけでなく、近現代においては大地震で被害が発生するごとに法令の改正が行われているため、ほかの建物と比べて、決して木造建築が耐震性能において劣るといったことはありません。
むしろ、新耐震基準に適合した木造住宅は、震度6強~7程度の地震に耐えることができるとされています。
このように、木造住宅は決して地震に弱いわけではありません。適切な設計・施工を行うことで、高い耐震性を実現することが可能です。
ただし、旧耐震基準で建築された木造住宅は、耐震性が不足している場合があります。そのため、旧耐震基準の木造住宅にお住まいの方は、耐震診断や耐震リフォームを検討することをおすすめします。

木造住宅の倒壊、なぜ?

近年、大地震が発生するたびに、木造住宅の倒壊が目立つようになっています。
その理由は、大きく分けて以下の3つが考えられます。

  1. 品質のばらつき

鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物は、材料のほとんどが工場で生産されます。そのため、一定の品質を維持して建物を組み立てることができます。
一方、木造住宅(特に従来工法)の住宅は、現場での加工が中心になります。そのため、品質にばらつきが出る部分があり、設計通りの構造にならないことも多いです。

  1. 耐震基準の変化

1981年に施行された旧耐震基準では、震度6強程度の地震に耐えられることが求められていました。しかし、1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準の木造住宅が倒壊するケースが相次ぎました。
そのため、1995年に新耐震基準が施行されました。新耐震基準では、震度6強~7程度の地震に耐えられることが求められています。

しかし、旧耐震基準で建築された木造住宅は、耐震性が不足している場合があります。

  1. 老朽化による弱体化

木造住宅は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物に比べて、経年による劣化が早い傾向にあります。
シロアリや腐食による構造の弱体化が起こりやすいため、耐震性が低下する可能性があります。
これらの要因が重なり合うことで、木造住宅の倒壊リスクが高まっています。

木造住宅の耐震性、そのカギは?

木造住宅は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて、耐震性が低いと考えられがちです。しかし、適切な設計・施工を行うことで、高い耐震性を実現することが可能です。

屋根の重さ、耐震性との関係

屋根の重さは、木造住宅の耐震性と密接な関係があります。
一般に、屋根が重いと、重心が高くなり、地震の揺れに抵抗する力が弱まります。そのため、倒壊や損壊のリスクが高まります。また、地震による瓦の落下の対策も必要になります。
一方、屋根が軽いと、台風などの強風に弱くなるというデメリットがあります。
そのため、屋根の重さを軽くするかどうかは、耐震性と強風への耐性を両立させるために、慎重に検討する必要があります。

木造住宅の耐震性を支える基礎

基礎は、建物を支える土台であり、その構造によって耐震性が大きく左右されます。

古い住宅では、玉石基礎や礎石と呼ばれる、柱を石のくぼみにはめ込んで支える工法が取られていました。しかし、この構造は耐震性としては弱いとされており、現在では、コンクリートによる布基礎やべた基礎を採用する住宅がほとんどです。

布基礎は、建物の周囲にコンクリートを打設して支える工法です。べた基礎は、建物の下前面にコンクリートを張って支える工法です。
一般的に、べた基礎の方が布基礎よりも耐震性が高いといわれています。これは、べた基礎の方が広い面積で建物を支えるため、地震の揺れに抵抗する力が強いためです。
ただし、基礎の耐震性には、基礎の厚さや鉄筋量などの要素も影響します。また、現場での施工によっても、耐震性は大きく左右されるため、設計通りの施工が大切です。

木造住宅の耐震性を支える壁

木造住宅は、地震の揺れに抵抗する「耐震壁」と呼ばれる壁をバランスよく、適切な量を配置することで、強度を高めています。

耐震壁は、柱と梁をつなぐ壁で、地震の揺れで生じる水平力を支える役割を果たします。耐震壁の量が多いほど、地震の揺れに耐えられる力が強くなります。
また、2階建ての場合、2階の壁の真下に1階の壁があれば、重量を支えるのに有利です。この割合を示す「直下率」を見ることも大切です。直下率が70%以上であれば、地震に強い建物と判断されます。
耐震壁の配置や直下率は、住宅の耐震性を左右する重要な要素です。住宅を購入する際には、これらの点に注意して選ぶようにしましょう。

木造住宅の耐震性を支える金物

木造住宅の耐震性を支える重要な要素のひとつが、金物です。

金物は、構造を作る木材同士や、基礎と木造の骨組みをつなぐ部分に使われており、木材同士を強固に固定する役割を果たします。適した位置に適した金物が配置されていることが、耐震性にもつながってきます。

具体的には、以下の場所に金物が使われます。

  • 柱と梁をつなぐ接合部
  • 耐力壁と柱をつなぐ接合部
  • 基礎と柱をつなぐ接合部

これらの接合部で金物がしっかりと固定されていれば、地震の揺れで木材がずれたり、抜けたりするのを防ぐことができます。

また、金物の種類や強度にも注意が必要です。一般的な金物は、地震の揺れに耐えられる強度を備えていますが、場合によっては、より強度の高い金物が必要になることもあります。

木造住宅の耐震性を蝕む腐食

木造住宅の耐震性は、構造を支える木材の強度に大きく左右されます。しかし、シロアリや腐食などの影響で、木材が弱体化すると、耐震性が低下する恐れがあります。

シロアリは、木材を食い尽くすことで、建物の強度を著しく低下させます。腐食は、木材を腐らせることで、強度を低下させます。
そのため、シロアリや腐食の被害を受けないように、シロアリ対策や防腐処理を行うことが重要です。また、床下などの湿気が溜まりやすい場所には、換気扇や湿気取りを設置して、湿気を防ぐことも大切です。
シロアリや腐食は、建物の外観からは判断が難しいため、定期的に専門業者による点検や調査を行うようにしましょう。

木造住宅の耐震性を左右する地盤

地盤は、建物の揺れやすさに大きく影響します。地盤の硬さや水分量によって、地震の揺れが大きくなったり、小さくなったりすることがあります。

木造住宅の場合、軟弱な地盤は、地震の揺れを大きく受けやすいといわれています。これは、軟弱な地盤は、地震の揺れを吸収する力が弱いためです。
そのため、木造住宅を建てる際には、地盤の強度をしっかりと確認することが重要です。地盤が軟弱な場合は、地盤改良工事を行うことで、地震の揺れを軽減することができます。
また、地震の揺れによって地盤が液状化してしまうことも考えられます。液状化とは、地盤が水分を多く含んでいる場合に、地震の揺れで地盤が砂状になり、流動化してしまう現象です。液状化が発生すると、建物が沈下したり、倒壊したりする恐れがあります。

そのため、地震の多い地域では、液状化の可能性を事前に調査し、対策を講じることが重要です。

木造住宅の耐震性を高める耐震補強工事

耐震補強工事は、既存の建物の耐震性を向上させるための工事です。建物自体の骨格を変えることは困難なため、耐震性を左右する要素を改善することで、耐震性を高めていきます。

木造住宅の耐震性を高める屋根の軽量化

木造住宅の耐震性を高めるためには、屋根の重量を軽くすることが重要です。屋根の重量が重いと、地震の揺れで建物にかかる負荷が大きくなり、倒壊のリスクが高まります。

屋根の重量を軽くするためには、以下の方法があります。

  • 軽量瓦や金属製のスレートに置き換える
  • 屋根の構造を軽量化させる

軽量瓦や金属製のスレートに置き換えると、屋根の重量を大幅に軽減することができます。また、屋根の構造を軽量化させるためには、屋根材の種類や厚さ、葺き方を工夫します。

現在では、地震に強い特殊な瓦の葺き方が施工される場合もあります。これらの方法により、屋根の重量を軽くすることで、耐震性を高めることができます。

木造住宅の耐震性を高める基礎の補強

木造住宅の耐震性を高めるためには、基礎の補強が重要です。基礎が弱いと、地震の揺れで建物が倒壊するリスクが高まります。

基礎の補強には、以下の方法があります。

  • 基礎の作り変え
  • 基礎と土台の金物固定

基礎の作り変えは、基礎の強度を根本から高める方法です。基礎の種類や構造を変更することで、地震の揺れに耐えられる強度を高めることができます。

基礎と土台の金物固定は、基礎と土台をしっかりと固定することで、地震の揺れで基礎と土台がずれたり、抜けたりするのを防ぐ方法です。

これらの方法を組み合わせることで、基礎の耐震性を高めることができます。

木造住宅の耐震性を高める壁の補強

木造住宅の耐震性を高めるためには、壁の補強が重要です。壁が弱いと、地震の揺れで建物が倒壊するリスクが高まります。

壁の補強には、以下の方法があります。

  • 筋交いの追加
  • 壁の追加

筋交いの追加は、既存の壁に斜めに木材を設置することで、地震の揺れに抵抗する力を高める方法です。筋交いは、柱と柱の間に設置するのが一般的です。

壁の追加は、新たに壁を設置することで、建物の強度を高める方法です。壁は、耐力壁と呼ばれる、地震の揺れに抵抗する力を持つ壁を設置するのが一般的です。

2000年の耐震基準改正

2000年6月、建築基準法が改正され、耐震基準が大幅に強化されました。この改正では、従来の「仕様規定」から「性能規定」への移行が図られ、建物の耐震性能がより明確に示されるようになりました。

また、同年10月には「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、「新築住宅の住宅性能表示制度」が始まりました。この制度では、耐震性能についても「耐震等級」として表示されるようになります。

耐震等級は、壁量の計算やバランス、地域の地震係数などを参考にして1~3の範囲で決められます。目安としては、等級1が建築基準法の規定通りの性能で、等級2が1.25倍、等級3が1.5倍の強度を持っているとされます。

このように、新築時の「耐震等級」を一度確認してみることは、耐震性を確認する1つの目安になります。

木造住宅の耐震性向上のために

木造住宅は、地震に強いというイメージがありますが、地震被害を踏まえた新しい基準に適合していない場合、倒壊のリスクがあります。

そこで、まずは建築年月の確認を行いましょう。建築基準法の改正により、2000年6月以降に建築された住宅は、新耐震基準を満たしています。そのため、建築年月が2000年6月以前の住宅は、耐震補強工事などの対策を検討する必要があります。

耐震補強工事は、専門の業者に依頼することをおすすめします。費用はかかりますが、大切な命を守るためには必要な投資と言えるでしょう。

また、建築年月が2000年6月以降の住宅であっても、地盤の状態によっては地震の揺れに弱い場合があります。地盤の状態は、地盤調査を依頼することで確認することができます。

地震はいつ起こるかわかりません。日頃から、木造住宅の耐震性向上のために、できることから始めていきましょう。

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